大道芸観覧レポート モノクロ・フィルムでつづるkemukemu

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ポイエニレ・イゼイの人々

イメージ 1

マラムレシュ (1996年)
ポイエニレ・イゼイ村の人々




1996年、ルーマニアのある村での写真。
これは、11年も前の、
しかも、写真を撮るのは海外旅行に行ったときだけで、
ただスナップ写真として記録しておくぐらいの軽い気持ちだった。
カメラも、当時メーカー品でない一番安い一眼レフで、
あくまでも旅行のついでに持って行ったという程度である。
いまのように特に意識して写真を撮るということはなかった。

なぜ突然とりあげたかというと、
つい昨日、「トランシルヴァニア」というルーマニアを舞台にした映画を観て、
なつかしさとともに、
あらためて、この地方を思い出したからである。


ルーマニアのマラムレシュという地方は、
生きた民俗博物館とか、中世が息づいているといわれている。
私の数少ない海外旅行の中でも人々の印象が強く残り、思い出深い。
(いまは、家庭の事情で1泊以上の遠出はできない)
行こうと思い立ったのは、
ルーマニア、わけてもトランシルバニア地方のマラムレッシュ県(地域)を、
何回も訪れているエッセイスト、写真家のみやこうせいさんの本の影響である。


この写真の村には、シゲットという町からタクシーで入った。
着いたとき雨が降って来たので、
小さな小屋のようなところの屋根下で雨宿りをして休んでいたら、
地元の男の人が、通り過ぎた。
少したって、なんと手づくりのパンとチーズ(かなり大量)を持ってきてくれた。

雨が止んだので、村のあちらこちら散歩した。
地元の人がどこからともなく、たくさん出てきた。

この写真を撮った後、
村の人からジェスチャーで日曜日なので町(シゲット)までのバス(距離や約50キロ)がないと聞いた。
我々(当時21歳の長男も無理やり同行させる)は、真っ青になった。
ここで1泊し明日、町に戻ろうとすると、
その後の予定の電車や飛行機に間に合わなくなる。
どうみても、タクシー乗り場などなさそうな田舎の小さな半農半牧の村である。
くわしい地図もなく、人に聞きながら歩いて町にもどるしかない。
何時間もかかる。町に着く頃には夜になっているにちがいない。
仕方なく、心細い気持ちでとぼとぼ歩き始めた。
小雨がまた降る中、休み休み30分ぐらい歩いたが、これから先のことを考えると、
気持ちが暗くなる。

ふと、ヒッチハイクを試そうと思いついた。
映画で見たように親指を立てて、通る車に試してみた。
すぐ奇跡は起こった。乗せてくれたのである。
ついでに車の中でツイカというプラム酒もいただいた。
しかし、途中までしか行かれないというので、降りた。
道を通る町の方向への別の車に、親指を立て試したら、
またしても乗せてくれて、とうとう、町の中心部まで送ってくれた。
お礼に日本の扇子(おみやげ用)を渡した。


マラムレシュは、そんな町であり、村なのである。
写真家のみやこうせいさんのいうとおり、
この地域の人たちは、底抜けに明るいし、旅人をあたたかく歓迎してくれた。
なんといっても、笑顔がいい。


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