大道芸観覧レポート モノクロ・フィルムでつづるkemukemu

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CD「今、祈りの中で」 本谷美加子(ホンヤミカコ)

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「今、祈りの中で」 本谷美加子(ホンヤミカコ)



2001年末、四国歩き遍路を体験中だった
オカリナ奏者の本谷美加子(現在はホンヤミカコ)さんの
コンサートツアー「今、祈りの中で」が
高知、大阪、東京、札幌の4都市で開催された。
このアルバムは、札幌で行われたコンサートの模様を
ライブ録音、編集したものという。
伴奏の編成は、弦楽四重奏+ギター。


〆、祈りの中で(作曲:本谷美加子)

オカリナの力強く、そして太い音色ではじまり、
後に少し高音に移ることにより、今、祈りの中で、夜が明け、
天からの大いなる光が大地に静かにさしてくる、
そんな壮大なイメージを感じることができ、
旅の「はじまり」の曲にふさわしい。


△燭鵑櫃櫃檗丙邏福本谷美加子)

TVのサントリー「続・のほほん茶」CM曲。
明るい青空を背景に、
あたたかな太陽の光や風につつまれて咲くたんぽぽと
のどかな風景のイメージが広がる。
「たんぽぽぽ」と「ぽ」が添えられているところが、
オカリナらしくかわいい。
聞いていて、ほんわかしてくる曲である。


小鳥(作曲:本谷美加子)

朝、目が覚めると、あちこちで「小鳥」たちのさえずりが聞こえてくる。
歩いていても、そして森や林の中からも・・・・
どこか「希望」を抱かせる名曲といっていい。
リズミカルで、聴いていると、思わずうきうきしてくる。

なお、2001年3月から四国霊場八十八ヶ所巡りに出た本谷美加子さんが
結願するまでの1年9ヶ月間、遍路する中でのさまざまな出会い、
すばらしい自然、たくさんの想い、
そして「祈り」をテーマに、創作活動に取り組み、
このアルバムの4年後に、「風に抱かれて」というアルバムをリリース。
(残念ながら限定版で、公式サイトからの直販で入手するしかない)
この中で本谷さんは、「小鳥のワルツ」を発表しているが、
この「小鳥のワルツ」は「小鳥」とちがい、
ここには、ただ明るく鳴くだけでなく、
すでに、悲しみ(哀しみ)を知った小鳥がいる。
本谷さんのお遍路経験の実の一つが、
この「小鳥のワルツ」にあらわれているような気がする。
「小鳥のワルツ」、これも名曲である。


ね杁い淵茱奪僖薀ぁ丙邏福本谷美加子)

「陽気なヨッパライ」とは、
サーカスの道化師(クラウン)のイメージだろうか。
それとも、お酒好きの本谷さんが旅の途中で出会った陽気なヨッパライか。
リズミカルで楽しい曲。
これを聴くと、つい踊ってしまう子どもや大人がいるかもしれない。


Lunacia(作曲:本谷美加子)

「哀愁」が感じられる、一度聴いたら忘れられない名曲。
後半からの盛り上がりがいい。
しかし、いったい、Lunaciaの物語とは??


Asturias(作曲:アルベニス

アルベニスは、
グラナドスとならんでスペイン国民派を代表する作曲家、ピアニスト。 
Asturiasアストゥリアス)はスペイン北部の実在する地名だが、
音楽的には、むしろスペイン南部のアンダルシア地方から
影響を受けているという。
アルベニスの「スペイン組曲」の「スペインの歌(前奏曲)」というピアノ曲が原型。
後にフランシスコ・タルレガによりギター曲として編曲され、
以後ギター版が有名となった。
このCD(コンサート)でも、オカリナと合わせ、
ギターの魅力が発揮されている。


鳥のうた(カタルーニャ民謡)

スペインのカタルーニャ地方に生まれたチェロ演奏家、指揮者、作曲家の
パブロ・カザルスカタルーニャ民謡「鳥の歌」を演奏し始めたのは、
第二次世界大戦終結した1945年といわれる。
この曲には、故郷への思慕と、平和の願いが結びついており、
以後カザルスの愛奏曲となった。
せつなさと静かな祈りがこめられたようなメロディが印象深い名曲。
原曲はカザルスの故郷カタルーニャクリスマス・キャロル(歌)であり、
聖誕を鳥が祝っている様子を歌っているという。

カタルーニャ・クリスマス民謡 「鳥の歌」 柳 貞子 訳詞)
明け染めて 陽は輝き、
虹色の空に 鳥は歌う
平和の歌、 愛に満ち溢れ、  

オカリナの土のひびきが、平和への祈りを主題にしているこの曲に合う。


Me visito' mi amado(チュニジア古謡)

「ムワッシャハ」という北アフリカチュニジアに残る
中世セビリア起源のアラブ・アンダルシア系音楽らしい。
14世紀末にスペインのイスラム勢力が駆逐され、
かの地のアラブたちは土地を追われて、北アフリカに逃れ定住したという。
当時のアラブの音楽家達も追われ、
ロッコアルジェリアチュニジアなどに定住し、
スペインで発達した音楽形式や表現を持ち帰ってきたらしい。
そして、マグレブ地方の地に定住して後世に伝えていったアラブ音楽には、
スペインのアンダルシアの影響が強く出ており、
アラブ・アンダルシア音楽と呼ばれている。

高音のオカリナが、アラブリズムとともにふしぎな世界をつくっている。


Galoche(作曲:本谷美加子)

本谷美加子さんは、
別にジンタ風の「靴の音」という曲を作曲していることや、
「サーカス」や「旅芸人」というテーマ性をもった
「Lunacia」というアルバムに、
この曲をはじめて発表していることから、
おそらく「Galoche」(ガロチェ)はフランス語の「木靴」か。
この曲を笛で吹いているサーカス芸人の横で、
木靴を履いた道化師(クラウン)の陽気に踊っているか、
行進しているイメージが浮かぶ。
サーカス系音楽で、
オカリナ演奏の巧みさと合わせ、陽気なメロディのこの曲、
本谷さんのリズミカルな演奏の表現力と魅力が発揮されている名曲だと思う。

木靴は、オランダなどで泥よけのために靴の上に履かれたようだが、
広くヨーロッパで広まった。
サーカス芸人などにも、パフォーマンスのときに使われたらしい。
また、ベルギーのカーニバルで、
道化師が木靴を履いてタ木靴を踏み鳴らしながら踊るという。
そして、あの名優チャップリンも、
ミュージック・ホールでパントマイム劇などを演じて一家の家計を支え、
10歳の時には木靴のダンスを専門とする一座に加わり、
研鑽を積んだことがあるという。
また、タップダンスは、
アイルランドの鉱夫が木靴で踊っていたダンス(クロップダンス)が
ルーツだと言われてる。
木靴のカタコトという音といろいろなリズムを表現できことから、
踊りと結びつくようだ。

本谷さんは、このコンサートバージョンでは、
遊び心で、「青いカナリヤ」のメロディの一部をまぎれこませている。


喪失(作曲:本谷美加子)

生きていくという旅の途中で、なにかを失うことはさけられない。
どこか悔いも残る。
しかし、一方で、なにかを得、新たに発見し、出会うこともある。
この曲は、失ったこと、失った者を静かに確かめ、
そして、それに対する祈りをこめた鎮魂曲のような気がする。


Ave Maria(作曲:カッチーニ

「Ave Maria」は、
シューベルトやグノーの作品をはじめ多くの作曲家が手がけているが、
こちらは、官能的な旋律をもつカッチーニのヴェマリア。
実際には、1970年頃、
ソ連の音楽家ウラディーミル・ヴァヴィロフによって
作曲された歌曲であるという説が近年は有力であるといわれているが、
心にしみる名曲であることにはちがいない。

オカリナで聴くと、祈る中で、
遠い風景まで浮かんできて、これもまたいい。


芽ぐみ(作曲:本谷美加子)

曲のタイトルのように、静かな春のめざめを感じさせる。
旅の中で出会う雄大な風景がイメージされる。


コンドルは飛んでゆく~花祭り(ジョウルジュ・アロミア~ホセ)

コンドルは飛んでいくはアンデスフォルクローレの代表的な曲で、
また、「花祭り」は、「春祭り」としても知られているアンデスフォルクローレ
客席の手拍子なども録音されていて、その臨場感がいい。


大地の旅(作曲:本谷美加子)

西日本放送「風に抱かれて」番組のテーマ曲。

数々の出会いと別れ・・・・、
それは旅であり、巡礼でもある。
小鳥のさえずりを聞きながら、風に抱かれて歩いた道・・・
自然の風景の中での平和への祈り・・・
そんな旅の終わりに、
このシンプルなメロディはふさわしい。

そして、終わったところから、またいつか、
「今、祈りの中で」旅がはじまる・・・・



ホンヤミカコ(2009年9月より名前の表記が変更)さんの
オリジナル(作曲)作品は、最初はなじみにくいところがあるが、
CDなどで何回も聴いているうちに、
テーマ性、ストーリー性への想像力を刺激させる、
味わい深いものが多い。

コンサート録音であるこのアルバムも、
オカリナ演奏にによって「旅」や「祈り」が感じられる
すぐれた選曲と構成となっている。




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