大道芸観覧レポート モノクロ・フィルムでつづるkemukemu

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かごめかごめ (4)

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かごめかごめ(4)



かァごめかごめ
かーごのなかの鳥は
いついつでやる
夜あけのばんに
つるつるつッペェつた
なべのなべのそこぬけ
そこぬいてーたーァもれ
(「竹堂随筆」から江戸時代中期の「かごめかごめ」)



さて、「日本のわらべ唄」(上笙一郎)によれば、
「かごめかごめ」と類似している鬼遊び、輪遊び、
あてもの遊びには、次のようなものがあるという。


中の 中の 小坊さん
何(なあに)して背が低い
親の逮夜(たいや)に魚(とと)食うて
それで 背が低い
うしろの正面 だァれ   (近畿・中国)


座頭さんェ 座頭さんェ
お茶を一杯 飲ましゃんせ
お茶はまァだまだ
まだと言うなら
おまえのうしろは だァれ
(鬼が当てそこなったら)
違(ちん)がらがった 違(ちん)がらがった
おまえのうしろは 誰さんか?   (九州)

「坊さん坊さん」(全国)
(みんな)坊さん坊さん どこへ行くの
(鬼)  わたしはたんぼへ 稲刈に
(みんな)わたしもいっしょに つれしゃんせ
(鬼)  おまえが来ると じゃまになる
(みんな)このかんかん坊主 くそ坊主
     うしろの正面 だァれ


ぁ嶇他阿気鵝]他阿気鵝廖柄換顱
(みんな)和尚さん 和尚さん どこへ行きなんす
(鬼)  わたしは丹波の 篠山(ささやま)に
(みんな)わしらも連れに しておくれ
(鬼)  女の道づれ じゃまになる
(みんな)この和尚さんは 胴慾(どうよく)な
(鬼)  そんなら後から ついて来い
(みんな)滑(すべん)なえェ 転(こ)けんなえェ
     ありゃ和尚さん 滑りました 転けました
(鬼)  わしの言うこと 聞かんけだ


ァ屬△屬立った煮え立った」(全国)
(みんな)あンぶく立った 煮え立った
     煮えたかどうだか 食べてみよ
(鬼)  まだ煮えない
(みんな)あンぶく立った 煮え立った
     煮えたかどうだか 食べてみよ
(鬼)  まだ煮えない
(みんな)あンぶく立った 煮え立った
     煮えたかどうだか 食べてみよ
(鬼)  もう煮えた
(みんな)あんたの名前は何て言うの?
(鬼)  奥さん
(みんな)奥さんの名前は 何て言うの?
(鬼)  柳の下のおばけ
(みんな)キャー 逃げろー   →鬼ごっこ

「中の中の地蔵さん」など地蔵遊びについては、
前々ページの「かごめかごめ(2)」をみてほしい。


ここで、歌詞(言葉)の形をみてみると、
「かごめかごめ」以外は、
すべて周りにいる子どもたちと
真ん中にいる子どもとの問答形式となっている。
しかし、「かごめかごめ」についても、
「いついつ でやる」という問いに対する答えが
「よあけの ばんに」であると素直に考えれば、
ここに問答のおもかげを感じることができる。
おそらく、「かごめかごめ」も、
もとは全体が問答形式だったにちがいない。

子どもたちにとっては、周囲の子どもたちと
輪の中心の鬼の子どもとの問答そのものも遊びだったのだろう。
やがて、問答遊びから、即興のやり取りをして、
あてもの遊びや鬼ごっこに発展していった。

ところで、「かごめかごめ」のほかは、
地蔵、坊さん、和尚、旅の聖である座頭(ボサマ)など
仏や仏につかえる人に対しての問答が多いということは、
柳田国男のいうように信仰行事が起源であったからか・・??


問答といえば、たしか昭和の時代でも、
「あなたのお名前なんてぇの?・・・・」なんていうのもあった。


さてさて、次に注目したいのは、
わらべ唄遊びでの、子どもがおもしろがる、
言葉(現象)についてである。

子どもにとっては、突然、ストンと足元がこけたりするのが、
理くつでなく、おもしろいのである。
すべる、ころぶ・こける、(底が)ぬける・・・・
これらの、わらべ唄の中の呪文のような遊び言葉(囃し言葉?)は、
遊びのはずみやバネとなって、問答や遊びのヤマ場に
導いている大切な要素なのかもしれない。
はじめ、口からでまかせだった言葉が、
やがて、楽しい決まり文句のようになっていく。

<ほかのわらべ唄の例>
●すべる 
<坊さん頭は 丸太町>(京都のわらべ唄)
坊さん頭は 丸太町 つるっとすべって 竹屋町・・・・

<江戸時代中期の「かごめかごめ」(一番上)

●ころぶ・こける
<上のぁ筺  
(みんな)滑(すべん)なえェ 転(こ)けんなえェ
     ありゃ和尚さん 滑りました 転けました

<お月(つき)さんなんぼ>(徳島県小松島市徳島新聞社のデータ)
お月さんなんぼ 十三、七つ まだ年若いな 
油屋の角で 油一升ふりかえしたすべってころんだ  ←● 
その油どうした 犬がねぶってそうろ・・・
(*「すべる」を含む)

<だるまさんがころんだ>?

●(底が)抜ける     
<「なべの底抜け」(全国)>
なべ なべ 底ぬけ 底がぬけたら 反(かえ)りましょう
たらい たらい   底がぬけたら 反(かえ)りましょう

<千葉県千倉町のわらべ唄・日露戦争後>
日本勝った勝ったロシヤ負けたロシヤの○○腰がぬけた。 ←●
おまげに軍艦底が抜けてそこで日本万万歳  ←●

岩手県「はないちもんめ」>
勝ってうれしいはないちもんめ
負けてうれしいはないちもんめ
隣のおばちゃんちょいと来ておくれ
鬼が怖くて行かれない
お布団かぶってちょいと来ておくれ
お布団ぼろぼろ行かれない
お釜かぶってちょいと来ておくれ
お釜底抜け行かれない  ←●
あの子が欲しい
あの子じゃわからん
・・・・・・



こうみてくると、
一番上の江戸時代中期の「かごめかごめ」も、
不思議に違和感がなく、
わらべ唄遊びの伝統そのものという感じがする。
本当は怖くない「かごめかごめ」!

子どもは、言葉遊びの天才である。




<そして次回へ、まだつづく>


・・・・